便秘外来
便秘は専門医による治療で大きな改善効果が期待できる疾患ですが、適切な治療を受けている方はまだ少ないのが現状です。市販薬を服用することでかえって症状を悪化させてしまっているケースもとても多くなっています。ここ数年で作用が異なる薬剤が次々に登場しており、便秘外来では便秘のタイプや体質、ライフスタイル、既往症などを考慮した効果的な治療を受けることができます。
便秘はQOL(生活の質)を大きく低下させますし、腸や肛門への負担が大きくさまざまな疾患を起こす要因にもなっています。また、便秘による悪影響は全身にも及ぶ可能性があります。これまで女性に多いとされてきた便秘ですが、高齢男性の便秘も大幅に増えてきています。便秘でお悩みでしたら、お気軽にご相談ください。
こんな症状がある方は便秘外来の受診をおすすめします
- 便が硬く、排便しにくい
- 便に血液が混じることがある
- お腹が張りやすく、苦しい
- 3日以上排便がないことがある
- 毎日排便があるが、すっきりしない
- 排便しても残便感がある
- 服薬しないと排便できない
- 服薬して下痢状態にならないと出ない
- 便秘薬の量を増やさないと効かなくなってきた
- 便秘だけでなく肌荒れもある
- 下半身がむくむ
便秘とは
以前は3日以上排便がない状態を便秘症と呼んでいましたが、2017年末に便秘の分類などに関する『慢性便秘症診療ガイドライン』が発表され、便秘は「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されました。排便の頻度にかかわらず、排便量が少ない・残便感があるなど満足できる排便ができていない状態も便秘に含まれます。
また、便秘の症状が現れる消化器疾患はいくつも存在します。そのため、便秘の症状があるようでしたら、便秘外来の受診が重要になってきます。
便秘の原因
便秘を起こす原因にはさまざまなものがあります。一般的によく知られた原因には、運動不足、水分や食物繊維の不足、腸内細菌叢の乱れ、ストレスがあります。それ以外で実はとても大きな原因となっているものがあり、それが排便習慣の乱れです。便意はスムーズに排便できる状態になった時に起こります。ところが便意を我慢することが続くと、徐々に便意が弱くなっていき、そのうち便意を感じなくなってしまいます。また、起床して朝食をとり、少し経った頃が一番自然な便意を起こしやすいのですが、忙しくて朝食を食べずにいると排便のリズムも乱れてしまいます。こうした習慣が積み重なって便秘を起こしているケースがとても多くなっています。
便秘の種類
便秘はいくつかのタイプがあり、大きく機能性便秘と疾患などによって起こる器質性便秘に分けられています。器質性便秘は狭窄性と非狭窄性があり、機能性便秘と非狭窄性便秘は排便回数減少型と排便困難型に分けることができます。
タイプによって作用の異なる治療薬から最善の効果を得られるものを選ぶことで、より効果的に便秘を解消することが可能です。適した食物繊維の種類が違うケースもありますし、合わない薬の服薬によって便秘が重症化する可能性もありますので、専門医による治療を受けることが重要です。
機能性便秘
機能性便秘は、腸管通過時間によって下記のように分類できます。なお、機能性便秘は以前、排便機能低下による弛緩性便秘、蠕動運動亢進により起こる痙攣性便秘、便意の我慢によって起こる直腸性便秘と別の分類がされていたこともあります。
結腸通過時間正常型
便意の低下が原因で起こります。直腸までは問題なく便が到達しています。
結腸通過時間遅延型
大腸の蠕動運動が低下することで起こります。便が直腸まで到達するために時間がかかるタイプです。
便排出障害型
いきんでもなかなか排便できないタイプです。原因は排便機能の低下などです。
続発性便秘(疾患などによる便秘)
器質性便秘
がんによる腸管閉塞や手術後の癒着などが原因となって便が出にくくなっています。手術が必要になる場合もあります。
肛門直腸疾患
慢性化した切れ痔によって肛門狭窄が起こり、排便時の強い痛みがあって排便が困難になり便秘が起こります。外来で受けられる日帰り手術で解消できます。
その他
神経疾患や筋疾患、糖尿病・甲状腺機能低下症などの内分泌・代謝疾患、降圧剤や向神経薬などが原因となって便秘を発症することがあります。
便秘外来の診察と検査
問診
排便に関するお悩みや便秘の状況をくわしくうかがって、触診や検査を行い、疾患の有無、原因や便秘のタイプ、問題点などを判断し、状態をくわしくご説明して治療方針についてご相談していきます。
検査
腹部の聴診と触診、腹部X線検査、腹部超音波検査を行って、問診内容と合わせて状態を把握します。必要があると判断した場合には、血液検査、大腸内視鏡検査を行います。
大腸内視鏡検査
大腸カメラとも呼ばれている検査で、大腸の粘膜を直接観察することができます。便秘の原因では、大腸がんや大腸ポリープなどが大きくなって便が通過しにくくなって起こっている可能性があるため、その確認を行います。また、大腸の長さなども確認できます。
治療
生活習慣改善
食生活やライフスタイルをくわしくうかがって、便秘解消のための生活習慣改善方法を具体的にお伝えしています。無理なくできることを中心に、効果の高い方法をいっしょに検討していきましょう。
薬物療法
さまざまな作用のある多数の薬剤がありますので、年齢やライフスタイル、便秘のタイプ、状態などに合わせて最適な処方を行っています。なお、下剤には、膨張性下剤、浸透圧性下剤、刺激性下剤、漢方薬があり、下剤以外では腸内フローラを改善するプロバイオテクス、上皮機能変容薬、消化管運動賦活薬などがあります。継続して使えるものや一時的な服用が望ましいものもあり、効果には個人差が大きいため、診療ごとに少しずつ薬剤の量や種類を調整してご自分に合ったお薬と服薬量をできるだけ早く見つけられるようにしています。